フライフィッシングを始めて何年かたった頃、そう、多分フライのボディ材にポリ材等を多く使うようになった頃から考えていたことがある。ロストしたフライに巻き付いているこれらのシンセティックなマテリアルはその後どうなってしまうのだろうと言う、なにやら青臭い疑問である。
釣りをしていれば誰しも一度は考える事だと思うけれど、それは僕の脳みその隅っこに張り付いていて消えることが無い。
もともと、フライに使われるマテリアルの多くはナチュナル素材が使われていた訳だが、自然界が産み出す素材の量には当然ながら限界があるし、希少な動物となれば保護も必要だし、多くの羽根や獣毛は入手しにくくなる、それらが段々と高価になって行くのは仕方のない事だったろう。
モスキートは全てグリズリーのコックハックルのフェザーだけで作られている、完成度の高いフライだ
やがて、熱心な釣り人はそれら自然のマテリアルに替わる新しい素材、所謂シンセティックマテリアルを作り出してきた。
マスクラットやフォックスなどの獣毛に替わってフライライトなどのポリダビング材が生まれ、ウールのヤーンはポリヤーンに、シルクフロスもナイロンフロスに替わって行く。
需要と供給そして経済性と扱いやすさ等を求めるにつれ、シンセティックなマテリアルがどんどん増えて来た。ボディ材だけではなくウイング材もテール材もそれこそレッグに至るまでこの世界には様々なシンセティック素材が溢れている。(フライのマテリアルに限った事では無いけれど)
これは僕のオリジナルのフライングアント、ウイング・ボディ・パラシュートポストにシンセティックマテリアルが使われる。これも僕にとっては大事なフライ
ドライフライに求められる浮力と、視認性を取ってみても明らかにそれを目的に開発されたマテリアルが優位なのは間違いないし、使いやすさをとっても癖の少ないシンセティックマテリアルの方が使いやすいのである。
ハッチに合わせたいろいろなステージの虫を模そうとすればするほどそれらのシンセティックなマテリアルの重要性が増してきたりする、決してそれを使わなければ釣れないと言う訳では無いが、自分のイメージするフライを作り上げるためには大変使いやすいからに他ならない。
今時、なぜこんな事を書きだしたかというと、最近インドネシアの海に大量に浮かぶペットボトルなどのプラスチックごみの映像を見た時に、頭の隅っこにひっそりと張り付いていたシンセティックマテリアルの件が突然浮かび上がって来たのである。
海洋プラスチックのごみ問題はかなり昔から認識はしていたものの、実際に海に浮かぶ大量のプレスチックごみを現実に見るとやはり結構なショックを受けるものである。
これらのプラスチックごみは決して海で生まれることは無い、全て陸上で作られた物であり、海は最後に行き着く場所に過ぎないのだ。
海洋プラスチックごみは目につきやすいペットボトルのようなものばかりではない、それらの中で一番多くの割合を占めるのは釣り糸だと言うデータもある、それも全て陸上で作られたものだ。
ここで断りを入れて置くが、僕は決して屈強なナチュラリストでも環境学者でもそれらの活動家でも無く、単なる釣り好きの親父である。
この問題を解決するための運動を起こそうとかどこかの環境団体に入って活動しようとか思っている訳でも無い。
タイイングにはなるべくナチュラルなマテリアルを使おうと昔から意識はしているけれど、それでもシンセティックなマテリアルに頼る事も少なくないし決してそれを排除しようなどと思っている訳でも無いが、シンセティックマテリアルに関する何かしらの意識はずっと頭のどこかに有って、タイイングしている時、川でフライを結ぶ時、ティペットをカットする時とかに必ず脳裏をよぎる。
今の時代、カットしたティペット屑を持ち帰るなんて常識ではあるけれど、それでもクリッパーでプチッとした切りくずを流れに落としてしまう事も少なくはないし、釣りがへたくそな僕は思わず合わせ切れしたりしてそれらのフライを川の流れに沈めてしまう事だってある。
ただ、そんな事をいつも頭のどこかに意識しておくことは大事だと思っている、クリップしたティペットの屑もそうだが、木の枝に引っかけたフライは可能な限り回収するとか必要以上に細いティペットは使わないようにするとか、釣りの場面で幾らかでも実行出来たら少しは違うような気がしている。
そうして自分が作った毛ばりで美しい魚を釣る喜びと、少しの罪悪感を表裏に持ち合わせながら、僕はこれからもこの釣りを他の楽しんで行くのである。
刈田式ヴェインファイバーは天然素材のヤーン
そんな折、水生昆虫の研究の第一人者である刈田敏さんが手がけた「刈田式ヴェインファイバー」が何故か目に留まった。
今更、と言われそうだが、勿論販売された時から知ってはいたけれど所謂ナチュラルヤーンという程度の認識しかなかったので特に意識しては居なかったのだがヴェインファイバーの名の通りウイングを意識して作られたものだと言う事を今更知って、早速、幾つか入手した。
まだ、使ったことが無いので何とも言えないのだが、来期はウイング材として使って見ようと思っている。
今使っているシンセティック素材のウイングに替わるかどうか来期の楽しみである。
ウイングとインジケーターにヴェインファイバーを使ったコカゲロウパターン、まだ使って居ないので何とも言えないが、解禁前に幾つかのパターンを考えてみる
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