9月16日(月)檜枝岐の帰りに雨の只見沢を釣る
桧枝岐キャンプですっかり元気を取り戻した僕は、伊南川沿いに只見町に出た。
まずは、遊漁券を入手しなくてはならない、昔はまち湯でも扱ってたのに今は扱ってないのね、確か堤防沿いの橋本屋旅館で扱ってたよなあと思い行ってみると「今、止めたんだですよ」とのこと、何処にあるか尋ねたらこの裏の目黒写真館で扱ってるよと教えてくれた。目黒写真館と言えば伊北漁協の新しい組合長さんだ、早速お店に伺ったが残念ながら留守でした。そういえば田子倉湖下の民宿でも扱ってたなと思い行ってみたが既に民宿もやってなさそう、また只見の町中に戻った。いやはやどれだけ只見から遠ざかっていたやら・・。
いやあ苦労して入手した日釣り券、勿体なくて使えない・・・とか。
町中に遊漁券販売所の幟を発見、ギフトショップの「ふじた」さんで日釣り券を購入して田子倉湖方面にUターンする。
田子倉湖を左手に国道252号線を六十里越峠に向かうと左手に旧田子倉駅の廃屋が見える、これも2011年の新潟福島豪雨により只見線が被災したあおりを受けて2013年に廃駅となったものだ。
道路の脇でただ朽ちて行く「旧田子倉駅舎」なんか胸が熱くなるよな
すぐその先には浅草岳など只見の山々への登山基地として造られた田子倉無料休憩所がある。ここに車を停めると只見沢はすぐ下だ。
因みに田子倉無料休憩所は2015年に新しく建て替えられて、とてもきれいな休憩所になっていた。と言うことはほぼ5年もこの川に来ていなかったということになるのだな。
もともとこの沢はイワナの川であり、小砂利を敷き詰めたようなマーブル模様のとてもきれいなイワナが釣れた。大きなイワナを目にしたことは無いがブナ林の登山道脇を流れる渓相と透明な流れが大好きな川の一つである。
ところが数年前の秋口には稚魚放流されたのか小さな木っ葉ぱヤマメの猛攻に閉口した記憶があって、もしかするとヤマメの生息圏に代わってしまっているかもしれない。
準備をして只見沢に降りる、早速目の前の流れにフライを落とすと落ち込み脇からピシッと音がしそうなほど素早く小さなライズがおこるが全くフッキングしない、もしかしてウグイかと思ったが釣れないことには正体がわかない。
只見線鉄橋下の小さなプールの橋脚すれすれにフライを落とすと橋脚をこするようにヤマメが出てフライを咥えた。
ここじゃ、見たことが無いくらいの良型の綺麗なヤマメだった、といっても25cmほどだが。
でも心の中では「やっぱりヤマメか・・・」と呟いていた。その上流でもチビヤマメ、お次もチビヤマメ・・。
やっぱりヤマメなのかい、ことごとくヤマメの川になって行くじゃねえの・・・
「まさか」、まさか」と呟きながら、チビヤマメをリリースしていく、もう少し上まで詰めればイワナの生息域に入るはず、何の根拠も無いのだがそう決めて段々きつくなる傾斜を上った。
後ろを振り返り落ちていく流れを見ながらここまで登れば流石にイワナの域だろうと自分に言い聞かせて上流に足を進めたとたん、右手の登山道からドタッ!と言う、木か何かから何かが落っこちたような大きな音がした。心臓が飛び出すかと思ったほどだ。
一瞬、あいつだと思って息を止め静かに辺りを見回して首から下げた笛を何回も吹いた。下の駐車場には僕の車しかなかったし、登山者とかなら声とか音とかもっとするだろうし・・・。間違いなくあいつだ。
熊鈴は車に忘れて来たことに今頃気づいた、どうしようか考えたが姿を現さないのなら大丈夫だろうと勝手に決め込んで釣りを再開した。
小さな砂利を敷き詰めたようなマーブル模様のイワナ、チビのくせにクリケットを咥えた。それでこそイワナだ
すぐに、待望のイワナが釣れた、僕の想定が正しかったことに少しばかり上機嫌になってポツン、ポツンと顔を出す小型のイワナを釣りながら沢を登って行く、もう少し良型が釣れるはずと思いながら詰めていくのだがなかなか思うようにはいかず、僕が折り返し地点に決めている支流の滝下のプールにフライを落とした。水面を割ってフライを咥えたのはまたしてもチビヤマメだった。
僕が命名した折り返しの滝、この先は餌釣りさんにお任せです。
「こんなとこまでヤマメが登ってるのか・・・」すぐ上の本流にフライを落としてみたやっぱりヤマメが出て来た。
僕はどちらかと言えばヤマメ釣りの方が好きなのだが、僕の中ではこの沢はイワナの沢であってヤマメを釣る川ではないと決まっているものだからどれほどヤマメを釣ったところで感動することは無いのだ、むしろ消沈するぐらいの話なのだ。
そんなこんなで折り返し地点を過ぎたのでここで釣りを終了して川を下る。
いつもは川沿いの登山道を下るのだが、先ほどの件もあって藪の中の登山道を歩く勇気は無いので、足腰にはしんどいけれど河原の大岩を登り下りしていくことにした。
ねえ君、トチの実食べる?ブナの実の方が好きだよね美味しいもんね♪僕よりも・・・(汗)
あいつの恐怖を除けばこの景色はなかなかお目にかかれるものではない、ブナの森の美しい流れを眺めながらの溯行はとても気持ちがいいものだ。
と、突然僕の背後でドタドタドタと言うあいつが走って行く音が聞こえた、体が固まるってこういうことだ。
こちらに向かってきたわけじゃないので良かったけれど、心臓がバクバク音を立てた。
あいつが草陰でまだこちらを覗いているかもしれない、僕はあえて平静を装いながら静かに岩場を下った。
「後ろからなんて卑怯な真似すんなよ、おまえにもプライドがあるだろ」と呟きながら駐車場に戻った。